2026年6月3日水曜日

森を歩き、星空を見上げて①:「美しさを感じる」

 「森を歩き、星空を見上げて」では、森を歩き、星を見上げるなかで私が感じたこと、心に浮かんだことを、少しずつ言葉にしてみたいと思います。森のこと、生命のこと、星や宇宙のことなど。ご感想いただけたら嬉しいです。

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 新緑の美しい季節から、生命の力を感じさせる濃い緑の季節へと移りつつあります。

 森や星空のガイドをしていますが、ガイド中によく説明しているのは生物の生態や進化の歴史、星や宇宙の解説です。でも、森を歩いていて一番心に残るものは何かと訊かれたら「木々の葉のさざめきと木漏れ日」だと答えると思います。

 森の木々の下から空を見上げると、陽の光に透かされた一枚一枚の木の葉の色は少しずつ異なり、同じ葉でも風でその色や形を変え、サラサラと音を立てながらゆらめきます。ただ見つめているだけで気づくと時間が過ぎてしまっています。

 


 星空を見上げていて一番心に残るものは何かと問われたら、その輝きです。暗い夜空の中に光る星たちの光が、大気のゆらめきでまたたきます。星の色もそれぞれです。真っ赤なアンタレス、真っ白なベガ、少し黄色なプロキオン。望遠鏡で見れば、天の宝石と言われ、宮澤賢治が青宝玉(サファイア)と黄玉(トパーズ)と表現したアルビレオの二重星や、紫と白に見えるコル・カロリにも出会えます。何度見ても思わず息を止めて見入ってしまうぐらい美しいと感じます。

お客様撮影

 昔から「人はどうして美しさを感じるのだろう」と不思議でした。野の花や雨粒をまとったクモの巣、日の出や雲海、冬の夜空や夏の天の川を見ると美しいと感じます。でも、それでお腹が満たされるわけでもなく、生き残ることや子孫を残すことに、すぐ役立つようにも思えません。それでも人は美しさを感じる心を持っているようです。


 もちろん、健康状態や生命力を美しさとして感じることもあるでしょうから、まったく関係がないとは言えないのかもしれません。ただ、その「なぜ」は、今は少し横に置いておきたいと思います。大切なのは、多くの人の中に「美しさを感じる心」があるということなのだと思います。



 森の中で美しさを感じている時、私はまるで自分が透明になって景色の中に溶け込んでいくように感じることがあります。自分が完全になくなるわけではなく、自分の輪郭が薄くなって、見ている私と、見られている森が、少しだけ分かちがたくなるような感覚です。星空を見上げながら寝転がっていると、いつしか大地に支えられている感覚が薄れ、自分が夜空に吸い込まれて宇宙の中に浮いているような感覚になります。


お客様撮影

 そういう感覚になった時、ふと「自分の悩みなんて小さいな」とか「どうしてあんなことにこだわっていたんだろう」と、そして「これで十分」と感じるのです。不思議ですね。何かをしようとしなくても、ただ美しいという感覚を十分にあじわっているだけで、心が満たされていくのです。

 それは幸せといってもいいのではないでしょうか。


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