森に入ると、木々や草花、虫や鳥たちが、その生き方を通じていろいろ教えてくれているように思います。
森を歩きながら私なりに学んでいることを少し書かせていただきます。
1.生命は多様だ
森を眺めると、高い木もあれば低い木もあり、シダや草、コケも生えています。
目には映らなくてもさまざまな動物や虫たち、菌類たちも暮らしています。
もともとはただ一つだった生命。
そがいまや無数に枝分かれし、それぞれにユニークな生き方をしています。
その多様性が森の美しさと循環する豊かさを生み出しているようです。
2.すべてがつながっている
クロモジの木の前で深呼吸をしてみました。
私が吸った息には、クロモジが太陽の光を浴びてつくった酸素が含まれています。
その酸素は私の体の一部となります。
私が吐いた二酸化炭素は、やがてクロモジに取り込まれ木の一部となります。
私たちに取り込まれなかった酸素や二酸化炭素は大気の一部となって漂います。いつか誰かの一部になるでしょう。
私とクロモジ、太陽、大気、そして他の生命まですべてがつながっています。
3.食べる、食べられるは生命の循環とバランスを生む
遊歩道をふさぐようにジョロウグモが大きな巣を張っていました。
小さな虫がかかり、静かに食べられています。
食べること、食べられることは生命のつながりの典型です。
誰かの命が、誰かの命を支えます。
食べる・食べられる関係が、お互いの関係にバランスを生み出します。
食べる側もやがては死を迎え、大地や大気に戻り、いつか新しい命を育てます。
食べる、食べられることが、循環と均衡を生み出しています。
4.競争は創造と共存にもつながる
大きくなったコナラの下で、枯れたネジキの木を見つけました。
かつては光を浴びて鈴なりのまっしろな花を咲かせていたことでしょう。
自然界には食べる・食べられる以外にもさまざまな「競争」があります。
生き残るための競争も大きな視野で見れば、「より環境にあった生き方を生み出す(選ばれる)コンテスト」という意義も大きそうです。
競争は創造とも強くつながっているようです。
5.変わることで継続する
トチの丸い実がたくさん落ちていました。みんなまんまるです。
生命は「遺伝子」によって受け継がれていきます。
遺伝子は自分をコピーして命をつないでいきます。
しかし多くの生き物では、子どもは親と少し違う遺伝子になるようにできています。
だからこそ、多様さが生まれ、環境の変化にも適応していけます。
生命誕生後38億年もの間、生命が続き、豊かな循環する自然が生み出されたのはこの変われる仕組みのおかげが大きいでしょう。
6.全ての生命は兄弟姉妹である
遊歩道にシラヤマギクが咲いていました。
キクの仲間は進化の過程ではかなり最近現れた新しい仲間です。
その傍らにはコケがまるく生えていました。
コケは約5年前に出現したとても古いタイプの植物です。
見た目はだいぶ違いますが、キクもコケも植物です。
実は植物も動物も菌類も、すべての生命は38億年前に出現した共通かつただ一つの同じ祖先から進化しています。
古いタイプの生命も、人間もすべての生命は等しく38億年の歴史を持つ兄弟姉妹です。
7.死が生を支えている
アザミの花にやってきたマルハナバチが蜜を集めている途中で動かなくなりました。
そっとさわっても動きません。どうやら寿命を迎えたようです。
さらに歩くと、カケスの羽が散らばっていました。
弱っているところを他の生き物に捕らえられたのでしょうか。
死は一つの生命にとっての終わりです。
一方で、その死は他の生命を支えています。
食べられることは直接的に、死によって次の世代が生きていくために必要な場所や餌などが譲られることも他の生命、次の世代の生命を支えています。
8.私達は大きな生命を生きている
森を歩いて気づいたのは無数の個性のつながりと循環でした。
それはまるでインドラの網(*)のようです。
全てが繋がりつつも表面的には一つひとつの生命として顕れている。
つながりつつ、時にはもとの海に戻っていく。そんなふうにも見えます。
どの生命も、他の生命や自然環境から切り離されては生きてはいけません。
私たちも木々もシカも草花も鳥たちも、太陽のエネルギーであり、大気であり、大地であり、他の生命なのです。そこには上下や優劣はありません。
大きな生命の一部でもある私たちはどう生きていくのがいいのだろう。
森の中でそんなことを考えてみると、また違った生き方が見えてくる気がします。
(*)インドラの網(因陀羅網)
仏教思想において、帝釈天(インドラ)の宮殿に飾られた網のこと。網の一つひとつの結び目に宝石が結びつけられていて、それぞれが互いの姿を無限に映し出している。世界のあらゆるものが互いに深く関係し合っているという仏教の「縁起」や「重々無尽」といった世界観を表している。
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上に書いたこと、中には見当違いなこともあるかと思います。
でも、こんな森(世界)の見方が、世の中をすこし住みやすくしてくれるような気がしています。
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